前回の記事では、管理職になった際に最初にするべきこととして「信頼関係を築くこと」が重要であるという話をしました。今回は、その“信頼”というものについて、もう少し深く掘り下げてお話ししたいと思います。
管理職としてチームをまとめていくうえで、信頼関係は土台となるものです。どれだけ優れたスキルや経験を持っていても、部下から信頼されていなければチームはうまく機能しません。逆に言えば、信頼があるだけで、チームの雰囲気や仕事の進み方は大きく変わるものです。
しかし、この信頼というものはとても厄介で、築くのは難しく時間がかかるのに、崩れるのは驚くほど簡単で一瞬です。その点について順番に考えていきましょう。
人の信頼は短期間では築けない
人と仲良くなること自体は、そこまで難しいことではありません。場合によっては、初めて会ったその日に意気投合して友達になることもあるでしょう。共通の趣味があったり、話が合ったりすれば、一気に距離が縮まることも珍しくありません。
しかし、「信頼」となると話は別です。
例えば、知り合って間もない人から「お金を貸してほしい」と言われたらどうでしょうか。多くの人は、たとえその人と仲が良くなったとしても、簡単には応じないのではないでしょうか。それは、まだその人を“信頼している”とは言えないからです。
信頼とは、時間をかけて少しずつ積み重なっていくものです。
日々の行動、言葉、姿勢、約束を守ること、困ったときに助けてくれること。そうした一つ一つの積み重ねによって、ようやく信頼というものは形になります。
私自身の感覚ではありますが、信頼関係がある程度築かれるまでには、最低でも3か月ほどはかかると感じています。多くの場合は半年ほどかかることも珍しくありません。それほど、信頼というものは簡単には得られないものなのです。
だからこそ、もし相手から信頼を得ることができたと感じたときは、その関係を大切にし、壊さないように意識することが非常に重要になります。
信頼が崩れるのは一瞬
ここまで、信頼を得るには時間がかかるという話をしてきました。それでは逆に、信頼を失うのにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか。
答えは、とてもシンプルです。
一瞬です。
それだけ信頼というものは脆いものなのです。
長い時間をかけて築き上げた関係でも、たった一つの行動で崩れてしまうことがあります。もちろん、一度のミスですべてが終わるわけではありませんが、そのミスの内容や状況によっては、一瞬で信頼を失うことも十分にあり得ます。
では、どのようなことで信頼を失ってしまうのでしょうか。
実は、その多くはとても些細なことです。
例えば、小さな約束を守らなかったり、報告すると言っていたことを忘れてしまったりすることです。
自分にとっては「大したことではない」と思えることでも、相手にとってはとても大切な約束である場合があります。そうした小さな出来事が積み重なることで、「この人は信用できない」と思われてしまうこともあります。
管理職という立場で特に気をつけなければならないのは、部下のミスに対する対応です。
基本的に、部下のミスは管理職の責任でもあります。なぜなら、その仕事を任せたのも、指示を出したのも、最終的な管理をしているのも管理職だからです。
しかし、時には自分を守るために、ミスをした部下だけに責任を押し付けてしまう人もいます。
「自分は関係ない」
「その人が勝手にやった」
このような態度を取ってしまうと、部下からの信頼は一気に崩れてしまいます。そして一度そのような印象を持たれてしまうと、信頼を取り戻すのは非常に難しくなります。
信頼を失うだけでなく、「この人は信用できない」という感情まで生まれてしまう可能性があります。そうならないためにも、こうした行動は絶対に避けるべきです。
ではどうすれば良いのか
では、管理職として信頼を築き、守り続けるためにはどうすれば良いのでしょうか。
これを一言で表すのは簡単ではありませんが、大切な考え方があります。
それは、
「部下のミスは自分の責任、部下の成果は部下の功績」
という姿勢を持つことです。
部下がミスをしたときは、自分の管理不足もあったのではないかと考える。
逆に、部下が成果を出したときは、自分の手柄にするのではなく、その人の努力として評価してあげる。
この姿勢だけでも、部下から見た印象は大きく変わります。
また、部下が不安に思っているときには、背中を押してあげることも大切です。
「やってみなさい。責任は私が取るから」と言える上司がいるだけで、部下は安心して挑戦できるようになります。
時には、部下を励ましたり、奮い立たせたりすることも必要でしょう。
相談に乗ったり、話を聞いたり、アドバイスをしたりすることも大切です。
こうした日々の行動や姿勢が、少しずつ信頼関係を作っていきます。
部下からすると、
「この人についていきたい」
「この人の下で働けて良かった」
と思えるような存在になっていくのです。
もちろん、言葉で言うのは簡単ですが、実際に行動するとなると不安もあるでしょう。責任を取ると言って、本当に問題が起きたらどうしようと思うこともあるかもしれません。
しかし、そうした姿勢を見せていると、いざ自分が困ったときに、今度は部下が助けてくれることもあります。そうして、お互いに支え合える良い関係が生まれていくのです。
管理職であるあなたにも、当然上司がいるはずです。あなたが部下に対してどのような姿勢で接しているかは、きっと見てくれていることでしょう。
部下のためを思って行動しているのであれば、まともな上司であればそれを責めることはありません。
もし仮に、そのような行動を否定してくる上司がいるのであれば、あまり気にしすぎる必要はありません。どうしても環境が変わらない場合には、転職という選択肢を考えることも一つの方法です。
しかし、どんな状況であっても、上司がそうだからといって、同じことを自分の部下にしてしまうのは絶対にやめましょう。
それをしてしまった瞬間、あなたもまた信頼を失う側になってしまいます。
信頼は築くのが難しく、崩れるのは一瞬です。
だからこそ、その大切さを理解し、日々の行動を大切にしていきましょう。
その積み重ねこそが、強いチームと良い職場環境を作ることにつながっていくのです。


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