今までのやり方から脱却してもらえる方法

育成

人は誰でも簡単に考え方を変えたり、新しいことに適応できるわけではありません。多くの場合、人は自分が慣れている環境ややり方を好みます。これはよく「コンフォートゾーン」と呼ばれるもので、心理的に安心できる領域のことです。長く続けてきた仕事のやり方や考え方は、その人にとって最もストレスが少なく、安心して取り組めるものになっています。

そのため、たとえ新しいやり方を試したとしても、気づけば以前の方法に戻ってしまうことがよくあります。例えば、ダイエットを始めても三日坊主になってしまったり、新しい習慣を始めてもなかなか続かなかったりする経験は、多くの人が持っているのではないでしょうか。これは意志が弱いというよりも、人間の自然な心理によるものです。今までのやり方の方が安心できるため、無意識のうちに元の状態へ戻ろうとしてしまうのです。

職場でも同じことが起こります。新しい取り組みを始めても、しばらくすると以前のやり方に戻ってしまう。管理職の方であれば、このような経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。では、どうすればメンバーが今までのやり方から脱却し、新しい行動や考え方に移っていけるのでしょうか。

変わる事に対して背中を押す

まず大切なのは、「今までのやり方を否定しない」ということです。過去のやり方には、それなりの理由や背景があります。それを頭ごなしに否定してしまうと、相手は防御的になり、変化を受け入れにくくなります。

重要なのは、「変わることは悪いことではない」「新しいやり方を試してもいい」という空気を作ることです。変化を強制するのではなく、「やってみてもいいんだ」と思ってもらえる環境を整えることが大切です。

また、人は一人で変わろうとするよりも、周囲から応援されることで大きく行動を変えることができます。周囲が「それいいね」「やってみよう」といった前向きな反応を示してくれると、変化への心理的なハードルはぐっと下がります。

さらに重要なのは、急激な変化を求めないことです。いきなり大きく方向転換を求めてしまうと、負担が大きくなり、結局元に戻ってしまう可能性が高くなります。そうではなく、小さな変化から始めることがポイントです。

例えば、

  • 少しだけやり方を変えてみる
  • 小さな新しい取り組みを試してみる
  • 今までとは違う視点で考えてみる

このような小さな変化を積み重ねていくことで、徐々に新しいやり方が当たり前になっていきます。すると、最初は違和感があったことでも、次第にそれが新しいコンフォートゾーンになっていくのです。

成功体験を与える

もう一つ重要なのが、「成功体験を積んでもらうこと」です。

例えば、これまで指示待ちで、自分から動くことが少なかった人がいたとします。その人が自分の判断で小さな行動を起こしたとき、それをしっかり認めてあげることが大切です。

「良かったね」
「その判断は助かった」
「自分で考えて動いてくれてありがとう」

このような言葉をかけることで、本人は「自分でやってもいいんだ」「認めてもらえた」という感覚を持つことができます。こうした小さな成功体験が積み重なることで、自発的な行動が増えていきます。

逆に、「自分で考えてやれ」と言葉だけで伝えても、すぐに行動が変わるとは限りません。これまで指示を受けて動くことが当たり前だった人にとって、自分で判断することはリスクに感じることがあります。間違えたときの責任を恐れて、結局判断を上司に仰ぐようになることも多いのです。

その結果、管理者側も「結局指示した方が早い」と感じてしまい、再び指示型のマネジメントに戻ってしまうことがあります。短期的にはその方が効率的に見えるかもしれません。しかし、中長期的に見ると、メンバーが自ら考えて動けるようになる方が、組織全体の生産性は大きく向上します。

メンバーが自発的に動くようになると、管理者の工数も自然と減っていきます。さらに、仕事を「自分ごと」として捉えるようになるため、責任感も強くなります。

そして、もう一つ重要なのは安心感を与えることです。メンバーが自分で判断して動くためには、「最終的な責任は管理者が持つ」という安心感が必要です。

もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。時には失敗することもあります。その場合は責めるのではなく、軌道修正やサポートを行うことが大切です。こうした経験を積み重ねることで、メンバーは少しずつ成長していきます。

まとめ

人が変化するには時間がかかります。すぐに結果を求めたり、急激な変化を求めたりすると、どうしても元のやり方に戻ってしまいやすくなります。

そのため、変わってほしい方向に向かって、少しずつ小さな変化を積み重ねていくことが重要です。小さなタスクでも構いません。行動してくれたことに対して必ずフィードバックを行い、良い部分はしっかりと褒めましょう。

そうすることで、メンバーは自ら行動するようになり、仕事を自分ごととして捉えるようになります。結果として、責任感や主体性も自然と高まっていきます。

変化に対して消極的な人やネガティブな反応を示す人に対して、無理に指示を出して動かすのではなく、「やってみてもいい」と思える環境を作り、背中を押してあげることが大切です。

そして忘れてはいけないのは、最終的な責任は管理者である自分が負うという姿勢です。この安心感があるからこそ、メンバーは新しい挑戦をすることができます。

小さな変化を積み重ね、成功体験を増やし、少しずつコンフォートゾーンを広げていく。その積み重ねが、組織全体の成長へとつながっていくのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました